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リアブレーキキャリパーの謎
トランスアクスル系のリアブレーキキャリパーはハンドブレーキ機構内蔵+パッドクリアランス(同時にハンドブレーキ遊び)自動調整機構が組み込まれています。しかし、なぜ自動調整機構が必要なのか、パッドクリアランスは本当に自動調整されているのか、自動調整されるのであれば、なぜさらに手動パッドクリアランス調整ボルトが付いているのか等、疑問点が有ります。そこで素人なりにいろいろと推測してみました。注: 文字用の領域がありません!
1.自動調整機構とは何か?

図1は75リアキャリパーの図面です。今のところ手に入れることのできる図面ですが、残念ながら不鮮明です。そこでおそらく基本的には同じ機構の国産車のリアキャリパーの図面である図2を使って説明します。だだし、図2のキャリパーは対向ピストンを採用している75とは違って片押し式ピストンであり、手動パッドクリアランス調整ボルトも付いていません。注: 文字用の領域がありません!
まず、それぞれのパーツがどのように動くかです。

@ハンドブレーキ使用時
ハンドブレーキを引くとワイヤーが引っ張られクランクレバーを引きます。クランクレバーが引かれると、クランクレバーシャフトが回転し、クランクレバーシャフトのオフセットした穴におさまっているストラットが図面で言うと左に押されます。そうするとアジャスティングボルト、ピストンが直接押され最終的にパッドが押されてブレーキが効きます。余談ですが、75は対向ピストンですが、片方(内側)のピストンにしかハンドブレーキ機構が付いていないので、ブレーキディスクをはさむのではなく片側から押しているだけのため効きは甘いです。

Aフットブレーキ使用時
ブレーキを踏むとキャリパーシリンダー内にブレーキ液圧がかかります。するとピストンは左に押されパッドを押しブレーキが効きます。

ハンドブレーキ機構を内蔵していないフロントキャリパー等の場合、パッドが減った分はピストンが左に移動し、その分キャリパーシリンダー内に液が余分に満たされて、それで何の問題もありません。しかしハンドブレーキ機構が内蔵されていると、アジャスティングボルトを介してパッドを押す事になるので、パッド磨耗によりピストンやアジャスティングボルトが左に移動してしまうとハンドブレーキレバーの引き代がどんどん増えてしまいます。そこでそうならない様に、ピストンが左に移動した分はアジャスティングボルトが右に移動しA寸法が一定になりハンドブレーキの引き代が増えないようになっています。

どのようになるかというと、アジャスティングボルトはラバーシールの付いている位置の関係上、液圧がかかるとピストンとは正反対の右(赤矢印)方向へ動こうとします。アジャスティングボルトはボルト山でスリーブナットと噛み合っており、スリーブナットはピストン内部に固定されていて回転するようになっているので、上のようにそれぞれ反対方向の力が働くとスリーブナットが回転してアジャスティングボルトが右方向へ移動します。同時にパッドクリアランスも適正に自動調整される事になります。これが自動調整機構です。

スリーブナットの回転についてですが、図3の通りスリーブナットにはクラッチスプリングが付いていて一方向にしか回らないようになっているので、アジャスティングボルトは右方向へ移動できても左方向へは戻れない様になっています。なぜ一方向にしか回らないかはまだよく理解できていないんですがよく考えてありますね。

2.手動パッドクリアランス調整ボルトはなぜ必要か?

さてここで疑問点ですが、図2の国産車は75リアキャリパーのように手動パッドクリアランス調整ボルトは付いていません。パッドを交換した場合等のクリアランス調整はブレーキペダルを何回か踏んでピストンを押し出します。では、なぜ75は手動パッドクリアランス調整ボルトが付いているのでしょうか?

国産車と75の違いは国産車は片押し式ピストンで75は対向ピストンである事です。これは私の推測ですが、片押し式だと液圧は一つのピストンにしか掛からないので、アジャスティングボルトとスリーブナットが噛み合っていて抵抗があっても、ペダルを踏む事で十分にピストンを押し出す力が得られるのではないかと思います。

対向ピストンだと液圧が2つのピストンに分散する上、リアはリアタイヤのロック防止のためのプロポーショニングバルブをブレーキ液ラインの途中に介していて(国産もプロポーショニングバルブは付いていると思いますが)液圧が制御されるので、アジャスティングボルトとスリーブナットの噛み合いの抵抗に勝ってピストンを十分に押し出すのが難しいか、できても時間が掛かるのかもしれません。

そうなると特にパッド交換後のクリアランスが大きくなっている時には、ブレーキングに危険が伴ってしまいます。またキャリパーが新しい間は問題無くても、古くなってくるとスリーブナットやアジャスティングボルトが錆などで動きにくくなり、クリアランスが自動調整されにくくなるのかもしれません。この為に手動パッドクリアランス調整ボルトでクリアランスを調整する必要が有るのではないかと思います。

一度クリアランスが適正に調整されれば、あとは少しずつのパッドの磨耗に応じて自動調整が効くものと思われますが、上記の部品の錆等の他に何らかの原因でパッドが急激に磨耗した場合は、もしかしたら自動調整が追いつかない事もあるのかもしれません。その場合はフットブレーキ、ハンドブレーキともに効き始めのポイントが通常より深いあるいは大きくなると思われます。

それから、ハンドブレーキ内蔵側ピストン(内側)は自動調整機構や手動パッドクリアランス調整ボルトが必要ですが、反対側(外側)はいらないのではないかという疑問もあります。これはたぶん片方だけ自動調整機構や手動パッドクリアランス調整ボルトが付いていると、両ピストン間で動きに対する抵抗に大きな差ができてしまい内側ピストンの自動調整機構が効かなくなってしまうので、バランスをとる意味で両方に同じ機構を持たせているのではないかと思います。

以上のことが75のリアキャリパーが複雑な機構となってしまった理由ではないかと思います。ただ情報が不充分な上に、これまでリアキャリパーを分解してみた事もないので、間違った理解をしているかもしれません。75リアキャリパーの鮮明な図面、バラして壊してしまってもいいリアキャリパー中古品等有れば頂きたいですし、プロから聞いた正確なご意見などあれば教えてください。注: 文字用の領域がありません!
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